DX推進に役立つアジャイル思考とは?背景からポイントまで徹底解説!

✔︎ この記事を読む時間の目安: 8  
この記事のレベル
おすすめ度
 (3)
重要度
 (4)
難しさ
 (2)



こんにちは、チョトラです!

「アジャイル思考って何…?」「どんな効果があるんだろう…?」と悩んでませんか?

DXに必須とも言われるアジャイル思考ですが、そもそもアジャイル思考とは何か、DX推進にどう活かせるのか、わからない人も多いと思います。

そこで今回は、アジャイル思考の概要やメリット・デメリットを理解するための記事を用意しました!

 チョトラ
チョトラ

この記事は以下の人におすすめ!

  • アジャイル思考とは何かを知りたい
  • アジャイル思考を取り入れてDXを推進する方法を知りたい
  • DX時代のプロジェクトマネジメントを成功させたい


この記事を読めば、 アジャイル思考の概要を理解し、DX推進を成功させる方法がわかります。

また、環境の変化に対して、柔軟かつ機敏に対応できる組織づくりにも、大きく役立つことでしょう。

DXプロジェクトを成功させたい方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。

それでは、どうぞ!


アジャイル思考とは、「短期間で素早くトライ&エラーを繰り返しながら完成を目指す」思考です。

アジャイル思考は、英語の「agile (アジャイル)」と言う単語を語源にした「アジャイル開発」のコンセプトをもとに生まれた概念です。

アジャイル思考がどのようなものか理解するために、まずはアジャイルの意味や、ソフトウェア開発でよく使われるアジャイル開発の概要について見ていきましょう。


アジャイルとは?

アジャイルとは、日本語で「敏捷な」という意味を持つ単語です。

アジャイルの名詞型は「アジリティ(agility)」で、「敏捷さ」「機敏さ」などを表します。

アジャイルは、「アジャイル思考」「アジャイル型組織」「アジャイル開発」といった形で、ビジネス用語の一つとして近年一般的に用いられています。

アジャイル開発とは?

アジャイル開発とは、現在主流になっているソフトウェアの開発手法の1つです。

小さな機能単位で、高速に実装とリリース、テストを繰り返しながら開発を進めていきます。

2001年に、米国の専門家よって、ソフトウェア開発の心構えと12の原則がまとめられた「アジャイルソフトウェア開発宣言」と呼ばれる文書が原典となっています。

従来、システム開発においては「ウォーターフォール型」と呼ばれる開発モデルが主流でした。

しかし、ウォーターフォール型は、初めにプロジェクトの要件定義や設計を細部まで煮詰めてから、開発を進めます。

したがって、リリースまで時間がかかる、仕様変更や途中の修正対応が難しいといったデメリットがありました。

ウォーターフォールとアジャイルの違い


アジャイル開発においては、あらかじめ仕様や設計変更があることを前提に、大まかな仕様のみを決めて開発を進めます。

そして、「計画→設計→実装→テスト」といった開発工程を機能単位の小さいサイクルで繰り返すのが特徴です。

そのため、開発途中でフィードバックを受けながら、ユーザーのニーズを最優先に、素早く開発できる点が特徴です。

アジャイル思考の概要

アジャイル思考は、ビジネスにおいて「環境変化に機敏に対応する能力」を表す言葉として用いられています。

アジャイル開発のように、あらかじめ詳細な計画を立てずに短期的なサイクルで仮説検証を繰り返すことで、ニーズの変更に柔軟に対応する考えです。

ユーザーへの価値提供を重視した新規プロジェクトや、組織変革を実現するための方法論として、活用されています。

デザイン思考との関係性

デザイン思考は、アジャイル思考とともにDX推進において必須といわれる考え方です。

デザイン思考とは、デザインに求められる思考にもとづいて、ユーザーの潜在ニーズや課題を発見し、新しい解決法を生み出す手法になります。

メモ

潜在ニーズとは、本人が認識していない隠れたニーズのことです。

例えば、「温泉に行きたい」と思っていても、実際には温泉そのものを求めているとは限りません。

本当は「疲れが溜まっていてリラックスしたい」と思っていて、リラックスグッズやヨガなどで代用できることもあります。

このように、潜在ニーズとは、本人がまだ気づいていない真のニーズのことをいいます。


デザイン思考とアジャイル思考は、互いを補完し、相乗効果を発揮できる関係性です。

デザイン思考によって問題解決の道筋となるアイディアを見つけ、アジャイル思考にもとづいて実践を繰り返すことで、DXの推進につなげることができます。

デザイン思考についての詳細は、以下の記事をご覧ください。

デザイン思考とは?概要からDX推進に必要な理由、実践方法まで解説!


なぜアジャイル思考が必要とされているのか

近年ビジネスにおいて、なぜアジャイル思考が必要とされているのでしょうか。

その背景には、次の2つが挙げられます。

変化の多いVUCA時代

VUCAとは、「社会が複雑になり、先行きが不透明で将来の予測が困難な状態」を表す造語です。

近年は、疫病の流行・高齢化社会・自然災害など、予期できない出来事や従来にはない変化が相次いで起きています。

そのため、VUCAの時代に対処していくための柔軟な対応力が求められるようになりました。

その結果、アジャイル思考の「スピーディーな実践と改善サイクル」を取り入れようとする組織が増えてきています。

DXとの関係性

アジャイル思考はDXとの関連性が強いことからも、注目を集めています。

IPAのDX白書では、DXとアジャイル思考の関係について、以下のように述べおります。

DXは、ニーズの不確実性が高く、技術の適用可能性もわからないといった状況下で推進することが多く、状況に応じて柔軟かつ迅速に対応していくことが必要である。
そのため、日本企業にもアジャイルの原則にのっとったDXへの取組が求められる

DX白書2021 エクゼキュティブサマリー



DX化は、組織の仕組みを根本から変革することになるため、大きなプロジェクトとなります。

そのため、不確実性が大きく、将来の予想が難しくなります。

したがって、アジャイル思考を取り入れ、プロジェクトを小さなステップに区切り、素早く検証し続けることで、コントロールがしやすくなります。

アジャイルの原則とアプローチを取り入れた組織はどれくらいあるのかを調べた結果は以下となります。

引用: DX白書 エクゼキュティブサマリー


アメリカと比べ、日本ではまだアジャイルが十分に浸透していないことがわかるでしょう。

DXの実現には、新しいテクノロジーを試しながら、小さく高速に軌道修正しながら進めることが重要になります。

顧客に寄り添い、根拠を持って仮説を立て、必要最小の価値を持つ機能をリリースしてすばやく検証する姿勢が、DX推進に必須の考え方として、今求められています。

 チョトラ
チョトラ

これからは、「ただ決められたことをするだけ」というマインドでは、DX時代を生き抜けないってことか…

先の予測ができない状況でも、立ち向かって道を切り開くアジャイル的な姿勢が求められますね。


アジャイル思考のメリット

次に、アジャイル思考を取り入れた場合に、ビジネスの現場においてどのようなメリットがあるのかを解説します。


スピーディーな意思決定が可能

アジャイルの考え方では、現場でのスピーディーな意思決定が可能になります。

一般的に、組織では上司の決断を待ち、意思決定に時間がかかるケースが多くあります。

意思決定の遅さは、現場のスタッフにとってストレスになったり、ビジネスの機会損失につながることもあるでしょう。

しかし、アジャイル思考を実践すると、現場のスタッフやチームが尊重され、意思決定するための権限が与えられます。

すばやい意思決定とともに、ユーザーのニーズに対し、機敏な対応を行えるようになるでしょう。

変化に柔軟に対応できる

変化を受け入れ柔軟に対応できることも、アジャイル思考のメリットの一つです。

アジャイル思考は、環境変化に柔軟に対応するためのアプローチ手法です。

プロジェクトの途中で想定どおりに進まなかったり、新しい問題や課題にぶつかったりしても、都度検証を行い軌道修正できます。

アジャイル思考は「最初に詳細な計画を立てずに、実践しながら考え完成を目指す」スタイルのため、変化や変更にも少ない修正工数で対応できます。

エンゲージメントの向上

アジャイル思考を取り入れた組織を形成すると、エンゲージメント向上につながります。

エンゲージメントは、ビジネスにおいて「スタッフが組織に対し貢献意欲を深めること」という意味で使われる言葉です。

アジャイル思考を取り入れると、あらかじめ決まったやり方で業務に取り組むのではなく、スタッフは変化や課題から学びながら業務改善に取り組みます。

そのため、スタッフのモチベーションや生産性向上につながり、エンゲージメント向上が期待できます。

アジャイル思考のデメリット

次に、アジャイル思考を取り入れるデメリットを見ていきましょう。


マネジメントが難しい

アジャイル思考を取り入れると、各スタッフが意思決定の権限を持ちます。

そのため、リーダーとなる立場の人にとって、マネジメントが難しくなる点がデメリットの一つです。

アジャイル思考を取り入れると、それぞれのスタッフが責任を持って判断や行動をすることになります。

リーダーの管理が不十分では、チームの間の方向性がずれてしまう可能性に注意しましょう。

ゴール設定がしにくい

アジャイル思考の実践プロセスでは、まず大まかな計画を立て、都度ユーザーの意見を取り入れながら改善を加えていきます。

そのため、最終的なゴール設定がしにくくなる点がデメリットの一つです。

また、フィードバックを受け軌道修正を繰り返すうちに、方向性がぶれてしまう恐れもあるでしょう。

アジャイル思考が向かないケース

アジャイル思考は、DX推進に必要な考え方の一つです。

しかし、すべてにおいてメリットがあるとは限らず、組織によってはアジャイルの手法が向かないケースもあります。

例えば、指示がなければ動けないスタッフが多い組織、スタッフが自由に意見を出し合う文化がない組織、チームを横断した情報共有が難しい組織などでは、アジャイル思考は浸透しない可能性があります。

安易にアジャイル思考を取り入れる前に、これらの要件を満たしているかどうか、事前にチェックするようにしましょう。

アジャイル思考を取り入れた「アジャイル型組織」の特徴とは


DXを推進するために、アジャイル思考を取り入れた「アジャイル型組織」と呼ばれる組織へ移行する企業が増えています。

アジャイル型組織にはどんな特徴があるのか?について見ていきましょう。

アジャイル型組織の特徴

アジャイル型組織の特徴には、次の3つが挙げられます。


素早く短期間でPDCAを回していく

アジャイル型組織では、PDCAを短期間で回すことが特徴の一つです。

アジャイル思考においては、小さなサイクルでPCDAを実践する「フットワークの軽さ」を重視します。

そのため、アイディアをすぐに検証し、仕様変更や追加などがあった場合にも柔軟な対応が可能になります。

フラットな組織構造

アジャイル型組織は、一般的なトップダウンの組織構造とは異なり、スタッフやグループに権限を与え、意思決定を委ねます。

一般的なピラミッド型組織のように指示を受けて仕事をするのではなく、他職種のスタッフと横断したチームを作り、スタッフ自身が責任を持って判断を下します。

そのため、上から管理されるのではなく、それぞれのスタッフが主体性を持って動くフラットな組織になります。

ビジョンが明確

アジャイル型組織ではスタッフが主体性を持って業務に取り組むため、組織としての一貫性を保つためのビジョンが必要です。

「これから組織がどのような方向に進もうとしているのか?」

経営者からすべてのスタッフへ、ビジョンをきちんと伝えて浸透させる必要があります。

そのため、現場に浸透しやすい明確なビジョンを再定義することが求められます。

アジャイル型組織の成功事例

アジャイル開発の成功事例には、まず TXP Medical株式会社の提供する「新型コロナ患者入院調整システム」が挙げられます。

医療機関や療養施設などの間で速やかな情報共有を可能にする同ツールは、紙や電話による情報共有が中心だった医療機関において、正確で速やかな情報共有を実現に導きました。

また、株式会社Ubieが提供する「AI問診ユビー」もアジャイル開発を実現した事例の一つです。

外来業務をサポートする「AI問診ユビー」は、ユーザーの声をダイレクトに反映しながら、1週間という短期間のスプリント(一連の開発工程)を週3日ペースで反復し、年間150回というリリースを実現しています。

両者とも、アジャイルの考え方をもとに、環境変化に柔軟に対応しながらユーザーへ価値提供の最大化を実現する好例といえるでしょう。

アジャイル型組織を作る方法

自組織でアジャイル型組織への移行を検討するとき、他社の成功事例を参考にすることができます。

しかし、事例をそのまま真似ても、同じ結果になるとは限りません。

それでは、アジャイル型組織を形成するには、具体的にどのようなことを実践すればよいのでしょうか。

まずは、次の3つを実践してみるとよいでしょう。


学習環境を整える

スタッフが自ら学べる学習環境を整えましょう。

アジャイルの考え方では、実際の業務の中で、失敗と改善を繰り返しながら学ぶことが必要とされますが、知識を深めることも大切です。

E-ラーニングなどの研修環境を構築する、セミナーに参加する、組織内のナレッジを共有するための環境を整えるなどの対応を行い、スタッフが知識やスキルを習得する機会を作りましょう。

パイロット運用を行う

パイロット運用とは、「ある手法やプロジェクトを本格的に導入する前に、試験的に運用すること」をいいます。

いきなりアジャイル型組織への移行を行うのではなく、まずはパイロット運用を行うことが重要です。

なぜなら、アジャイル型組織の形成には、既存組織のルールが変わるなどの大きな変化をもたらすからです。

そこでまずは「数人程度の小規模なパイロットチームを作る」「短期間で完了できるパイロットプロジェクトを作る」といった形で運用すると効果的です。

こういった試験的な運用により、失敗するリスクを抑えることができます。

まずはアジャイル思考の小さな成功体験を集め、徐々に組織全体へ浸透させるとよいでしょう。

スタッフの自立性を育む

アジャイル型組織を作るには、スタッフそれぞれの自立性が必要です。

トップダウンの指示がなくても、自ら考えて行動を選択できるよう、自立性を持って業務に取り組むことが求められます。

自立的な行動を支援する仕組みや、意思決定のためにスタッフ間で情報共有ができる環境を整えるといった対応が必要になるでしょう。

まとめ:アジャイル思考で医療現場のDXを進めよう

今回は、アジャイル思考について解説しました。

ポイントをまとめますと、次の通りです。

まとめ
  • アジャイル思考とは、短期間で素早くトライ&エラーを繰り返しながら完成を目指すアプローチ
  • DX推進には、アジャイル思考を取り入れた組織づくりが重要になる
  • アジャイル型組織を作るには、まずは小規模に始める、自立性を育てる、学習環境を整備するなどが有効



医療現場ではピラミッド型組織が一般的なため、アジャイル思考を取り入れている組織はほとんどないと思います。

しかしながら、DXの推進には、このアジャイル的なアプローチが極めて重要だということは、ご納得いただけると思います。

「患者さん視点ではなく、上司の顔色を伺って決める。」「上から降りて来た指示でしか、現場は動かない。」

こういった硬直的な組織では、DXがうまくいくはずがありません。

現場スタッフが主体となって、業務を効率化するにはどうしたら良いか?

患者さんがより快適な医療体験をするためには、どんな改善ができるか?

そういう、デザイン思考によるアプローチで、スタッフ目線・患者さん目線からのアイデアが、求められるているでしょう。

いざプロジェクトを始めるときは、いきなり大掛かりで全社的に始めるのではなく、まずは小さくすばやく始める。

出てきた課題に対し、検証をすばやく行い、ブラッシュアップする。

こうした「デザイン思考 + アジャイルのアプローチ」が、医療現場でこれから一層求められてくることでしょう。

最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!