こんにちは、チョトラです!
「デザイン思考って何…?」
「自分にはセンスがないから、デザイン思考なんて難しそう…」
と悩んでませんか?
そこで 今回は、「デザイン思考の概要やメリット・デメリット、進め方」について解説します。
この記事は以下の人におすすめ!
- デザイン思考とは何かを知りたい人
- 課題に対し様々な対策をしたが、どれもうまくいかずに困っている人
- 顧客視点に立って、業務やサービスを改善したい人
この記事を読むことで、別角度から課題解決をするための、デザイン思考という強力な武器が手に入ります。
今後「攻めのDX」を目標としている皆様にとって、きっとお役に立つ内容と思います。
それでは、どうぞ!
デザイン思考とは、デザイナーが用いる思考プロセスを活用して、新しいビジネス課題への解決を図る思考法です。
「デザイン」という言葉が含まれていますが、一般的なデザインのように、色や形、素材などを考えるものとは異なります。
衣服や建築物などの設計 (デザイン)に用いる思考を用いて、ユーザーに価値提供を行うための考え方です。
変化の多い現代におけるビジネスパーソンに必須の知識として、今注目を集めています。
具体的にデザイン思考とはどのようなものか、見ていきましょう。
突然ですが、あなたは以下の問題に、どのように対策するでしょうか?
・ある空港で、「手荷物受け取り所での待ち時間が長い」とクレームが多数あげられていた。
・従業員が処理速度を上げようと様々な対策をするも、どれも効果がなかった。
・コンサル会社に相談し「オペレーションの見直し、人材投下」をすることに。
・その結果、待ち時間が「12分間から10分間」に短縮した。
・しかし、一向にクレームの数は減らなかった…
この事例は、ヒューストン空港での実際の出来事です。
医療現場においても「外来の待ち時間が長い」などのクレームが多いのではないでしょうか?
当初コンサルは、「待ち時間が長いこと」を課題に設定し、それに対し適切な解決策を導きだしました。
その結果、確かに物理的な待ち時間は短縮したものの、クレームの減少という目標は達成できず…
そこで、今度はデザイン会社に解決の依頼をしたところ、待ち時間は変わらないのに、クレーム数はほぼ0にまで減少しました。
このデザイン会社は、一体どういう策を講じたのでしょうか?
彼らはまず、徹底的な観察を行いました。
すると、クレームの原因が待ち時間の長さではなく、「せっかく早く受け取り所に到着しても、ただぼーっとするしかなく、自分の荷物が今か今かと強制的に待たされるストレス」にあると気づきました。
そこで、物理的な待ち時間の短縮ではなく、「乗客のストレスを減らす」という心理的なアプローチを行いました。
あえて、到着ゲートから荷物受け取り所までの距離を長くし、乗客に遠回りをさせたのです。
その結果、乗客が受け取り所に来る頃には、すでに荷物が出始めている状態に。
乗客の感覚的な待ち時間を減らせたことで、見事にクレーム数は激減しました。
そして、空港格付けランキング(ミシュランのようなもの)でも、大きく順位を上げたのでした。
このデザイン会社が使った手法が「デザイン思考」となります。
私たちは、何か問題があると、事例のコンサル会社のように、すぐに解決策を考えがちです。
しかし、それではうまくいきません。
問題の解決策より、問題発見の方がはるかに重要だからです。
かの有名なアインシュタインも、似たようなことを言っております。
私に世界を救うための時間が1時間だけ与えられたとしたら、最初の55分を何が問題かを発見するために費やし、残りの5分でその問題を解決するだろう。
問題発見の質次第で、成功・失敗が分かれるといっても過言ではないのです。
では、デザイン思考の起源についてみていきましょう。
1987年、ピーター・ロウが「デザインの思考過程」という書籍の中で、建築と都市のデザインの文脈で「デザイン思考」という言葉を使いだしたことが始まりです。
2005年には、シリコンバレーのデザインコンサルティング会社「IDEO」の元CEOであるティム・ブラウンは、デザイン思考を以下のように定義しました。
デザイン思考とは、デザイナーの発想法から生み出されたイノベーションへの人間中心アプローチであり、人々のニーズとテクノロジーの可能性、ビジネス成功の条件の統合を図るものである
IDEO ホームページ
また、IDEO創業者の一人であるデイビッド・ケリーが、自身が教授を務めるスタンフォード大学にデザイン思考を学ぶことができるd.schoolを創設。
これらにより、デザイン思考は、世界的に認知されるようになりました。
デザイン思考とは、人間を中心に置いて物事の解決を考えるアプローチになります。
冒頭の事例のコンサル会社のように、課題に仮説をたてて頭で解決策を探るのではなく、現場へ足を運び、人々の観察を通じて課題の本質を探る手法です。
主役は、あくまで人間となります。
人々がどう感じ、どう行動するか?隠れたニーズは何か?を探ることから始まります。
また、よくある誤解ですが、デザイン思考にデザインスキルや美的センスは、必須ではありません。
むしろ、デザイン思考は「非デザイナー」を対象にした思考法です。
今までデザイナーが無意識に人の問題を発見して解決していたものを、デザイナー以外でも真似できるように体系化したものがデザイン思考です。
デザイン思考とよく比較される思考法の一つに、「アート思考」があります。
デザイン思考とアート思考の主な違いは次のとおりです。
アート思考は、自由な発想にもとづいて、オリジナリティーの高いアイデアを生み出すための思考法です。
独創的な感性や発想が重要で、ゼロからサービスを作り出すために活用すると効果的です。
一方で、デザイン思考は、ユーザーの観察・共感から潜在的な課題を発見し、本質的な問題解決へとつながる価値提供を行うための思考法となります。
そのため、ゼロからサービスを生み出すことは苦手で、既存のものをより改良させる時に威力を発します。
一見して似ているように思われる両者ですが、活用する場面が異なるため注意しましょう。
デザイン思考は、DX推進に必須といわれる思考法の一つですが、なぜDXに必要とされているのでしょうか。
それは、消費者行動の変化により物が売れにくくなり、企業がビジネスモデルの転換を求められているから。
人々の行動は、所有からシェアへ、モノ消費からコト消費へと移り、もはや優れた顧客体験が得られるサービスしか生き残れない厳しい世界となってきました。
そうした中で、人々の視点に立ってニーズをしっかり捉え、変化する環境の中でも価値を生み出すことが得意なデザイン思考が、DXの文脈でも必要といわれているのです。
経済産業省が2018年9月に発表した「DXレポート」の中での見解について、見ていきましょう。
「DXの推進に求められる人材」として、以下のように述べています。
ユーザ起点でデザイン思考を活用し、UX (ユーザエクスペリエンス)を設計し、要求としてまとめあげる人材
DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)
また、DXにおいて、デジタル技術を活用するときに、以下のアジャイル的なマインドセットが重要と言及されています。
✔︎ 仮説検証の繰返しプロセスが確立できていること
DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~(METI/経済産業省)
仮説を設定し、実行し、その結果に基づいて仮説を検証し、それに基づき新たに仮説を得る一連の繰返しプロセスが確立できていること
✔︎ 仮説検証の繰返しプロセスをスピーディーに実行できること
このように、ユーザー目線に立ってサービスを改良しながら、短期間で素早くトライ&エラーを繰り返しながら完成を目指す「デザイン思考 + アジャイル思考」のアプローチが、DXの推進に重要といわれています。
アジャイル思考については、こちらの記事をご参照ください!
DX推進にデザイン思考を取り入れるメリットには、次の3つがあります。
ユーザーのニーズに沿ったサービス開発を行えることが、デザイン思考におけるメリットの一つです。
デザイン思考のプロセスでは、多くのユーザーにインタビューなどを行い、意見を聞くことが求められます。
ユーザーの意見に耳を傾けることで、ユーザーの声をダイレクトに反映したサービス開発につながります。
結果として、ユーザーから支持されるサービスになるでしょう。
補足なんだけど、ユーザーの声を聞いて、その通りに対応するだけじゃダメなんだ!
自動車王のヘンリーフォードも、「もし私が、人々に何が欲しいかを聞いたならば、彼らは『より早い馬車』と答えただろう。」と言ってるよ。
・1990年代の「もっと電話ボックスが多くなったらいいのに」
・2000年代の「ガラケーがもっと小型化したらいいのに」
などもそうですね!
ユーザーは今ある現実しか見えないから、本当に欲しいものは知らないんだ。
だから、ユーザーの行動から、隠れたニーズ(潜在ニーズ)を探ることが、超重要ですね!
デザイン思考のプロセスでは、ユーザーの置かれている状況を想像・理解する思考力が求められます。
また、グループで意見交換をしながら多くのアイデアを出すことが望ましいとされるため、他者の意見を肯定的に受け入れる姿勢も大切です。
そのため、デザイン思考のプロセスを繰り返すことで、さまざまな考え方に触れることが習慣化され、想像力や発想力を鍛えられます。
チームでアイディアを出し合い、共有するというプロセスから、組織力を強化できることもメリットです。
プロセスの実践において、他社の意見を否定せず、誰もが安心して発言できる文化を浸透させることができます。
また、メンバー間のコミュニケーションが増え、信頼関係の構築や仕事へのモチベーションにもつながるため、組織力の強化が期待できます。
デザイン思考の活用にはいくつもの利点がありますが、次のような弱点もあります。
デザイン思考は、チームの選定がしにくいことが弱点の一つです。
デザイン思考のプロセスでは、意見の多様性と、自由に意見を言い合える関係性が必要です。
似たような経験を持つメンバー同士では、新しい発想が生まれないでしょう。
また、上司と部下といった上下関係のメンバーで取り組む場合も、上司の意見が優先されてしまう可能性が高くなります。
そのため、デザイン思考の実践には、メンバーを適切に選ぶ必要があります。
デザイン思考は、結果が出るまでに時間が掛かるため、長期的に取り組む必要があります。
デザイン思考は5つのステップから構成されますが、必ずしもステップを一巡すれば終了ではありません。
試作品でテストを実施した後に、新たな課題を見つけ再定義することもあります。
仮説検証を繰り返し、トライアンドエラーを繰り返すため、どうしても長期的な取り組みになります。
デザイン思考は、ユーザーの声を集め、ニーズを分析し、試作品の感想や改善点をもとに、新たな課題を発見するために活用されます。
そのため、既存の製品やサービスを改良するのには適していますが、ゼロから物事を創出することには向いていません。
イノベーションや、0から1を生み出す時は、アート思考が適しています。
デザイン思考の進め方について、具体的なプロセスについて見ていきましょう。
まずは最初に、ユーザーがどこに不便を感じているか?どこに本当のニーズがあるか?を探ります。
先入観や思い込みを捨て、ユーザーになりきることで、小さな違和感に気づきやすくなります。
実際にユーザーと同じ体験をするなどして、徹底的に顧客目線を追求しましょう!
具体的には「サービスを利用しているユーザーへのアンケート・インタビュー」や「ユーザーの行動を実際に観察する」など。
このプロセスは、確かに手間で泥臭く地味な作業ですが、しっかり入念に行うことで後に得られる成果に大きな違いがでます。
ユーザーを正しく理解できるように努めましょう!
前のステップで得た多くの情報をもとに、ユーザーが本質的に求めているものは何か、仮説を立てます。
できれば、ユーザー自身も自覚していない本質的に解決すべき課題を定義することが望ましいです。
課題を適切に捉えられなければ、最終的にユーザーの求めているものを提供できなくなるため、特に重要なステップといえます。
課題を定義したら、次に解決のためのアイデアを出します。
この段階では、ブレインストーミングの手法を用いてアイデアを量産することを重視します。
ブレインストーミングとは、参加者が自由な発想で課題やテーマに対して意見やアイデアを出し合い、新しいアイデアを生み出す集団思考法です。
複数のメンバーで意見を出し合うことで、多様性が生まれ、斬新なアイデアが生まれる可能性が高まります。
アイデアが量産できたら、いくつか有効なものに絞り込みましょう。
前ステップで出たアイデアの中から最適なものを選び、試作品(プロトタイプ)を作ってアイデアを形にしていきます。
ポイントは、とりあえず作ってみるという気軽な感覚で挑戦すること。
はじめから完璧なものを作る必要はありません。
質にこだわるよりも、まずは形にすることを意識して、低コストでシンプルなものを作ります。
素早く失敗し、解決策を見つける意識が大切です。
アイデアを試作品として形にしたら、ユーザーに提供して反応を見ます。
また、ユーザーからフィードバックを得て、課題が解決されているかの検証を行います。
ユーザーが試作品をどのような使うか?などを観察することで、新たなヒントが得られるでしょう。
もし定義した課題が誤っていた場合は、再びSTEP2の課題定義に戻る必要があります。
テストの結果データをもとに修正や改善を繰り返し、ユーザーの満足する商品やサービスへ近づけていきましょう。
このプロセスでは「失敗したら何度も戻って繰り返す」ことが重要なんだ!
実は、とっても泥臭い作業なんですよね…
「かけた時間が勿体無い」「上司のアイデアだから」など、ユーザーの評価がイマイチなのに捨てるタイミングが遅いと、致命的になってしまうよ。
何度も早く前向きに失敗して、立ち戻る勇気を持つことが重要ですね!
デザイン思考を導入する際は、ツールの活用が効果的です。
具体的には、次のようなものがあります。
「ユーザーを理解し共感せよ」といわれても、言うは易く行うは難しです。
ユーザーが普段何を考え、どんなものを見て、何にストレスを感じ、実際にどう行動するか?を把握することは難しい…
そう悩んでいる時は、共感マップを検討してみてください。
共感マップは、スタンフォード大のカリキュラムでも実際に使われる、世界が注目するツールです。
以下の6つの要素から、ユーザーへの理解を深めます。
- See: 見ているもの
- Hear: 聞いていること
- Think and Feel: 考えていること・感じていること
- Say and Do: 言っていること・行動していること
- Pain: 痛みやストレス
- Gain: 得られるもの
これらの要素を埋めることで、ユーザーの感情を細かくつかめるようになり、より共感が得られやすくなります。
共感マップの作成は1人ではなく、グループで意見を出し合いながら整理することがおすすめ!
ユーザーのニーズを深く掘り下げたい時に、使用すると良いツールでしょう。
以下の記事が参考になりましたので、ぜひご覧ください。
ユーザーが企業の商品を知ってから、どんな感情を持ち、どんな行動をとるか、そして最終的に購入に至るのか?
この一連の動きを言語化し、可視化して時系列にまとめたものを、カスタマージャーニーマップといいます。
カスタマージャーニーマップの作成により、サービスの認知から購入に至るまでの各フェーズにおけるユーザー行動・思考・感情までを把握できます。
カスタマージャーニーマップについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
デザインスプリントとは、デザイン思考を体系的に実践し、業務に活かすために、Googleで開発されたフレームワークです。
具体的には、「ユーザーの理解から定義」「発散と決定」「プロトタイプの作成と検証」の3つのプロセスに分けます。
5日間という短期間に、少人数のチームでスピーディーに課題解決を目指すことに特化していることが、最大の特徴です。
検証結果が迅速にえられ様々な実践的な学びが得られることから、短時間で成果を出すことにつながります。
デザイン思考の基礎を学ぶには、書籍や研修動画、セミナーやワークショップを活用するといった方法があります。
体系的に学ぶことができる書籍や研修動画は、社員研修として取り入れることもできるでしょう。
デザイン思考を初めて学ぶ方には、以下の本がわかりやすくておすすめです!
また、経済産業省のWebサイトで紹介されているデザイン思考の基礎を学べる動画教材があります。
DX推進プロジェクトに活用したい方は、ぜひ視聴してみるとよいでしょう。
それでは、デザイン思考で医療現場での外来の待ち時間長くクレーム多い問題について、考えてみましょう。
まずやってはいけないことですが、いきなり問題の解決策を考えてしまうことです。
「医師の数を増やしたら良い。」
「外来スタッフの人材配置を見直したら良い。」
「このツールを導入して作業を効率化すればよい。」
「午前と午後に適切にバランスよく患者を割り振れば良い」
などです。
デザイン思考では、まず初めに「観察」から始めます。
「一体、外来で待っている患者さんは、どういうことを考えているんだろう?」
「外来で待っている間、どんな行動をとっているんだろう?」
共感ツールを使ったり、実際に自分が患者となって外来を受診してみると、より一層患者さんの気持ちがわかるでしょう。
次に、患者さん自身も気が付いていない本質的な解決すべき課題を設定します。
冒頭のヒューストン空港の事例のように、物理的な待ち時間ではなく、感覚的な待つことによるストレスが原因の場合、様々な施策がとれることでしょう。
2019年度冬季HCD研究発表会の「大学病院来院者の待ち時間における心理分析」にも、以下のような言及があります。
病院に共通する待ち時間に関する以下の二つの課題が導出された。
一つ目の課題は「直接的な待ち時間」に、二つ目の課題は「感覚的な待ち時間」に関係している。
特に二つ目の課題については,病院の待合室での “待ち” に おいて、”いつ自分が呼ばれるかわからない(呼ばれた時にその場に居ないと,せっかくの順番が飛ばされてしまう)” という懸念から待合室を離れることができず、せっかく設けられている食堂・売店・庭園などの設備を活用した「感覚的な待ち時間」の短縮ができないでいると推察される。
もし「感覚的な待ち時間の短縮」を課題に設定すれば、次はアイデア出しです。
個人でやるのではなく、チームを作って複数人でブレインストーミングをしてください。
アイデアの量産ができた後は、その中から最適なものを選び、プロトタイプを作って形にします。
「外来で漫画や雑誌を読めるようにする。」
「待っている間に、栄養指導を行う。」
「LINEを使った待ち時間の表示や、待ち時間終了通知を送るサービスを導入する」
などです。
プロトタイプを導入し、もし患者さんからの評価が悪ければ、課題設定やアイデアに問題があります。
再度、泥臭くステップをやり直し、再検証していくと良いでしょう。
今回はデザイン思考について、概要・DXにおける必要性・メリット・デメリット・実践ステップなどを解説しました。
ポイントをまとめますと、次の通りです。
- デザイン思考とは、非デザイナーのための思考法であり、人間を中心に考えて課題解決を目指す
- デザイン思考が成功するかどうかは、問題発見の質(= 潜在ニーズ)が命運を分ける
- 大きな変革が求められるDXの推進には、デザイン思考が不可欠になっている
医療現場には様々な問題があります。
平均利益率2%の病院経営困難問題、医師の働き方改革問題など。
これらに対し、コンサル会社から以下のような提案を受けたことはないでしょうか?
「病院の収益を分解すると、患者単価 × 患者数だ。患者単価を上げるには…。患者数を上げるには…。」
「医師の働き方改革でが、労働時間をしっかり把握できなければいけない。勤怠管理を強化して、ビーコンなどを設置して、24時間誰がどこにいるのか、常にわかるようにしよう。」
確かにこれらの施策で、病院の利益率は上昇するし、医師の打刻率上昇や労働基準監督署からの査定をクリアできるかもしれません。
ただ、私にはどうしてもこれらが、正解とは思えないのです。
デザイン思考でいうところの「人間中心」の考え方ではないのです。
「患者さんが病気になった時、数ある病院の中から、一体どういう気持ちで私達を選んだのだろう?」
「クリニックの先生方は、どういった気持ちで私たちに紹介をしてくださるんだろう?」
「医師の働き方改革は、医療者の生活と命を守るもの。当直でねれない状態で翌日も勤務するのはどういう気持ちなんだろう?」
「医療者が安心して医療に集中でき、かつ自己犠牲に陥ることなくプライベートも充実できるようになるためには、どうしたら良いんだろう?」
こういった観察や共感から始めた施策が、その病院の差別化につながり、未来永劫、その病院をその病院たらしめる独自なものになる気がしております。
確かに、守りのDXでは業務効率化が中心であり、このようなデザイン思考は不要かもしれません。
しかし、攻めのDXでは、デザイン思考は必要不可欠なものと考えております。
なぜなら、デザイン思考で人間中心に考えることで、患者体験(CX)、従業員体験(EX)が向上するからです。
カスタマージャーニーマップを描き、受診前・中・後まで全ての体験に対し施策を打つことで、顧客や職員から選ばれ続ける病院になります。
つまり、デザイン思考の導入で、DXの最終形態である顧客体験の上昇やビジネスモデルの創出への扉が、開くと思っております。
この記事が、皆様の現場にお役に立つことになれば幸いです。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!