こんにちは、チョトラです!
「自院のDXって進んでるんだろうか、それとも遅れているんだろうか?」
「DXの自己診断って、どうやって行うんだろう…」
と悩んでませんか?
そこで今回は「DX診断の目的や、実際の診断方法」についての記事を用意しました!
この記事は以下の人におすすめ!
- DXの自己診断方法について知りたい
- 自院のDXの現在地を知りたい
- 自院のDXがこれからどの方角へ進めばいいのか、全員の目線を合わせたい
この記事を読めば、 日本の医療業界のDXを牽引するファーストペンギンになる方法がわかります。
適切な診断をもとに自院ならではのDXを進め、患者さんや職員から選ばれる医療機関のきっかけになりましたら幸いです。
それでは、どうぞ!
DX診断とは、企業や組織におけるDX取り組みの進捗度を、自分達で把握することです。
なぜ診断が重要なのか、また、どのような目的でDX診断を行うのか、詳しく見ていきましょう。
突然ですが、これから「ダイエットを始める」ことを、考えてください。
まずはじめに何をするでしょうか?
食事制限をする。運動する。ジムに行く。ダイエットの本を読む。etc…
いろいろな選択肢が考えられると思います。
しかし、まず初めにやらなければいけないことは「体重計にのる」ことです。
なぜなら、体重計にのることで、以下のことがわかるからです。
- 体重・体脂肪率など、現在の状態がわかる
- 目標体重を決めるなど、ダイエットの今後の方針を立てることができる
- 定期的に体重に乗ることで、ダイエットがうまくいっているかどうかを判定できる
このように「体重計」という診断ツールには、現在地がわかる、今後の方針が決まる、適切な効果判定が可能になるという、3つの側面があることがわかります。
経産省はこれまで、日本国内のDX推進を加速するべく、さまざまな知見をまとめた報告書を発表しています。
そのうちの1つ「DXレポート2.0」を読み解くと、以下の通りです。
- 超短期アクションとして、まずは生産性向上や省力化のためのITツールを導入する
- 短期アクションとして、DX推進状況の把握、戦略の策定、体制の整備を行う
- 中長期アクションとして、人材の確保、プラットフォーム形成、外部との連携を行う
2022年現在において、会計ツール、労務管理ツール、Web問診ツール、電子カルテなど、医療機関でITサービスの導入が急速に進みつつある中、上図左端の超短期アクションはクリアできているのではないでしょうか?
一方で「医療界のDX = ITツールの導入」にとどまり、その先の短期的対応ができていないケースがほとんど…
DXの推進状況の把握なしにDXを進めることは、体重計にのらずにダイエットをしていることと同じ。
ぜひ適切なツールを用いて把握を行い、次の段階に進むためのアクションを明確にしていきましょう。
では、DXの自己診断を、どうやれば良いのでしょうか?
経産省が公表する自己診断ツール、DX推進指標についてご紹介いたします。
DX推進指標は、2019年7月に経産省によって発表された、自社のDX状況を自己診断するための指標です。
健康診断で例えると、問診や血液検査。
診断結果を踏まえることで、自社の弱い部分・伸ばす部分を認識でき、その後につなげることができます。
また、診断結果をIPAへ提出すると、全体データ・各業界をベンチマークに比較が可能になります!
血液検査結果も、全体データと比較ができないと、異常か正常かわからないですよね。
自社のDXの推進状況をベンチマークと比較することで
「他社よりも、IT投資が少ないな。」
「他社よりも、経営陣のコミットが低いのか。」
など、客観的に理解できるようになり、次のアクションを検討できます。
医療業界と一般企業では、大きくルールが違います。
一般企業のDX推進状況を把握するためのDX推進指標は、果たして医療業界でも有効なのでしょうか?
以下の3つの点から考察したいと思います。
- 医療業界と一般企業では、何が違うのか?
- 医療業界は、DX推進指標をどう扱えばいいのか?
- 飲食業界と医療業界の類似性
医療業界の特殊な環境を、他の業界と比較すると以下のようになります。
このように、両者には大きな違いがあるといえます。
「デジタル技術を活用して、サービスや組織文化、ビジネスモデルなどを変革し、競争優位を確立する」という一般的なDXの概念および診断指標を、特殊な医療業界にそのまま当てはめることは難しいかもしれません。
2022年8月、経産省は2021年度のDX推進指標の分析レポートを公開しました。
結果は以下の通り、医療・福祉界からは1つも提出がありませんでした。
では、病院やクリニックが、このDX推進指標を提出することは無意味なのでしょうか?
そんなことはありません。
誰もやっていないからこそ今がチャンスであり、このレポートを提出することで先行優位性を築くことができ、医療界の中で頭ひとつ抜けたDX体制を整えることができます。
また、提出することでベンチマークとの比較ができるようになりますが、特に飲食業界(サービス業)に注目すると良いでしょう。
以下で理由を説明したいと思います。
飲食業界と医療界を比較したものが、以下のテーブルです。
このように、構造上、飲食業界と医療業界は、極めてよく似ています。
コロナ禍により客足は伸び悩み、物価の上昇につき仕入れ価格が上昇しました。
お客との接点(タッチポイント)は、お店の中のみ。
競合店が増え、新規顧客の獲得コストが上がり続ける中で、いかに既存のお客がファンになってリピートしてくれるか?
そして、そのお客が別の新たなお客を連れてきてくれるか?
オフラインとオンラインの融合、タッチポイントの強化、顧客との関係づくり、顧客体験の向上など、飲食業界は今変わりつつあります。
こうした戦いを医療業界が参考にすることで、攻めのDXへのアイデアが生まれてくるかもしれません。
他業種と比較するって考え方は、スタートアップでも同じなんだ。この記事を抜粋しますね!
「スタートアップは99.9%の参加者が死ぬゲームなので、自分の同類と比較してはいけないということです。平均的な結果は『死』なんです。起業家の多くは、こんな人たちです。これまで素晴らしいコミュニティに身を置いていて、頭の良い高校に通い、平均以上の能力を持っていたことでしょう。それは素晴らしいことです。良い大学に行って平均以上の成績を収めたでしょう。これも素晴らしいことです。良い企業に入って、平均以上だったでしょう、うん、素晴らしい。でも、もしあなたが平均より少し上の創業者だとしたら、あなたの会社は死ぬんです。行き着く先は『死』。」
「周りの人たちと全く同じ行動をしていたら、ほぼ確実に死ぬ。そこを誤解してしまうのです。周りの人と違うことを進んでやらなければならないのです。これは怖いことです。突き抜けるのは怖いものです。この恐怖があるから素晴らしい会社を作るために革新的なことをやれる人というのが少ないのが実態です。」
DX推進指標を医療業界が取り入れることで、自院の客観的な立ち位置の把握と他業種との比較ができるメリットがあるとわかりました。
特に、ビジネス構造が似ている飲食業界をベンチマークにすることで、攻めのDXにつながるヒントがつかめることでしょう。
さて、ここからは実際のDX推進指標の流れについてご紹介したいと思います。
DX・IT担当者が 一人で回答するだけでは 、関係者間の認識の共有につながりません。
IT 部門の評価結果を事業部門が確認し、さらにその結果を経営幹部がレビューする、という一方通行の回答方法にならないようしましょう。
病院経営幹部、事業部門(診療部や看護部・薬剤部など)、IT部門でなどの関係者が集まって議論しながら、関係者間での認識の共有を図り、今後の方向性の議論の活性化をしましょう。
IPAのサイトから、自己診断のためのワークブックをダウンロードします。
各項目への回答には、経営幹部・事業部門・IT部門といった関係者で議論をしながら行うことが想定されています。
なお、9つのキークエスションについては、病院経営幹部自らが回答してください。
なお定量指標の評価に関しては、病院がDXによって伸ばそうとしている指標を自ら算出すると記載されています。
例えば、DXによって患者満足度調査の上昇を目指すなら、3年後に目指す数値目標を立て、進捗管理していきます。
以下の「DX推進ポータル」へログインし、ファイルをアップロードして提出します。
ベンチマーク入手のための手続きを行うことで、無償でベンチマーク資料が受け取れます。
詳細な操作手順については、DX推進ポータル 利用マニュアル を確認してください。
DX推進指標は良い点数を取ることが目的ではありません。
自社の現状や課題の認識を共有した上で、あるべき姿を目指すために次に何をするべきか議論 し、実際のアクションに落とし込みましょう。
一度診断を行っただけでは 、持続的な DX の実行につながりません。
翌年度に再度診断を行って、アクションの達成度合いを継続的に評価することにより、DXを推進する取組の経年変化を把握し、自社のDXの取組の進捗を管理することが大切です。
DX推進指標による自己診断が終わった後は、DX認定制度の申請をご検討ください。
この制度は、「専門医取得前の認定医制度」のような立ち位置。
クリニックや薬局・製薬会社などの医歯薬領域においても、近年、このDX認定制度を取得する動きがでてきました。
ここからは、DX認定制度の概要やメリット、進め方などをご紹介します。
2020年5月、経産省は約9割の日本企業のDXが適切に行われていないという状況を打破すべく、DX認定制度を作成しました。
国が一定の基準にもとづき、DX推進の優良な取り組みを行う企業を「DX Ready」として、認定するものとなります。
この認定制度には、以下のような特徴があります。
- 企業の規模や業種を問わず、全ての事業者が対象
- 認定申請や認定の維持に係る費用は、全て無料
- 1年間いつでもオンライン申請が可能
- 認定事業者については、オンラインで公表・認定事業者の取組の検索が可能。
病院もクリニックも薬局も、法人も個人事業者も、事業を営む全ての事業者が対象です。
無料で1年中申請が可能であり、認定を受けることで以下のメリットがあります。
医療機関がDX認定を取得するメリットには、以下があります。
- DX推進時に論点を整理できる
- 医療機関としての信用やブランドが向上する
- 融資や特例などの支援措置や、税額控除などの経産省の施策に応募できる
DX推進に役立つことはもちろんのこと、患者さんや職員、他病院への対外的アピールにつながります。
その結果、採用で有利になったり、満足度上昇やエンゲージメントの上昇につながることでしょう。
2022年4月、経産省は認定取得後の影響について調査を行い、以下の結果となりました。
DX認定を取得した事業者の多くがDX戦略の推進に役立っていると感じていると回答しました。
顧客イメージの向上や人材確保に向けた企業イメージの向上においてもメリットを感じていると回答しております。
また、8割の経営者が事業への良い影響が出たと回答し、6割が採用面で良い影響が生まれたと回答しました。
このように、DX認定を取得することで、さまざまな恩恵が得られることがわかるでしょう。
すでに、医療界でDX認定を取得した先駆者たちを参考にすることで、具体的なイメージが掴めます。
2022年12月現在、以下のリンクから認定事業者を検索できます。
以下、検索でヒットした医歯薬領域の代表的な事業者を紹介します。
埼玉県さいたま市にある、予防をメインに痛みの少ない優しくを目指す歯科クリニックです。
カルテ、レントゲン等のの電子カルテ化によりデータ分析を行い、オンライン請求などのペーパーレス化、型取りも光学スキャナー、3Dモデル化を採用。
ビジュアル的セルフケアの知識の提供による、患者さんの顧客体験向上を目指す取り組みをしております。
クリニックでDX認定を取得している極めて珍しい事例ですので、以下の記事をぜひご一読ください。
1980年創業、全都道府県に調剤薬局を展開し3,000名超の薬剤師を有する、日本を代表する調剤薬局企業です。
オンライン薬局サービスの拡充、お薬手帳プラスによる、患者の新たな「つながる」顧客体験の創出、クラウドサービスの活用など、5つのDX戦略を公表しています。
上の資料は「新たなビジネスと収益基盤の創出、新たな顧客体験の提供」という、攻めのDXの代名詞ともいうべき内容がつまっており、DX推進を目指す全医療者が読むべき必読の資料と考えます。
中外製薬は、1943年設立の大手医薬品メーカーで、がんや抗体医薬品で国内シェアNo.1を占めます。
2019年10⽉にDXを部⾨横断で推進する「デジタル戦略推進部」を発⾜し、デジタル基盤の強化、すべてのバリューチェーン効率化、AIを活用した革新的な新薬創出などの取り組みをしております。
3年連続で医薬品業界におけるDX銘柄へ選定されており、2022年、DXの取り組みが最も優れている企業として、グランプリに選定されました。
業界を問わず、日本で最もDXに力を入れている企業といえます。
次に、DX認定制度の申請や認定取得に必要なものについて解説します。
「DX-Ready」に認定を受けるには、「デジタルガバナンス・コード」における認定基準に達していることが条件となります。
経済産業省の公開する資料にて、認定基準・組織の望ましい方向性・取組例などが確認できるため、参考にするとよいでしょう。
以下のリンクからダウンロードして、設問に回答します。
申請書の設問へ回答後、DX推進ポータルから申請してください。
過去の認定事業者と申請書が公表されているため、参考にしてもよいでしょう。
上記で不明な点がございましたら、下記の公式ホームページをご確認ください。
各企業からも、簡単にDX自己診断が行えるツールが提供されています。
自己診断ツールを活用することで、現状の課題が可視化され、経営幹部とスタッフとで共通認識が持てるでしょう。
以下、DXの自己診断が行えるツールを3つご紹介します。
「ITをどのように活用してビジネスが成功するか」をマップ状の絵にまとめたIT戦略マップを作成し、組織の課題を可視化できるツールです。
Web上から設問に回答してIT戦略マップを完成でき、PDFでダウンロードできます。
わかりやすく組織の課題が見える化されるため、組織で意思統一を図り、共通認識を持ってDX推進を行うために活用できます。
NECの提供するDX診断ツールです。
「かんたんDX度診断」という名称どおり、6つの質問に対し、選択肢から該当するものを選択・回答し、短時間で簡単にDXの診断を行えます。
診断結果を取得するには会社名等の入力が必要となりますが、診断結果に加え、おすすめのソリューションや事例なども紹介してもらえます。
電通グループが開発した、マーケティング推進における課題を抽出し、数値化する診断サービスです。
合計32項目からDXの課題を数値化し診断できます。
顧客体験、システム・データ、組織、業務といった4つの領域の取り組みをヒアリングし、ビジョン・顧客思考性・DX進捗度といった3つの視点から課題を抽出。
複数の領域から多角的な評価が可能なため、自社の現在地の把握し、自社ならではのDXを進める方向性が明確に。
また、課題に合わせたソリューションの提案など、DXを進める支援まで行ってもらえます。
今回はDX診断について、重要性や目的、DX推進指標やDX認定制度などを解説しました。
ポイントをまとめますと、次の通りです。
- DXを推進するためには、まずは診断を行ない、現状の把握をすることが大事
- DX推進指標を使えば、現状の把握とベンチマークとの比較ができる
- DX認定制度を活用すれば、さらなるDXの推進とブランド・認知獲得が可能になる
医療者に「診断」の重要性をお伝えするなんて…と、少し不思議な気持ちでこの記事を書いていました。
医療では当たり前ですが、専門外のDXでも診断が重要だなんて、びっくりされたのではないでしょうか?
今回ご紹介したDX推進指標は、「院内」でのDX文化・風土の醸成に大きく貢献することでしょう。
一方でDX認定制度は、「院外」のステークホルダー(患者さんや職員、他病院など)との関係づくりに活きてくるでしょう。
内側から始まり、だんだん外側へと広がっていく様は、「守りのDXから、攻めのDX」へつながる姿そのものです。
すでに国内のクリニックで、DX認定を取得している施設もあるのです。(すごい…!)
ぜひ、皆様の組織でも、DX推進指標の活用、DX認定制度の取り組みをご検討いただければ幸いです。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!