こんにちは、チョトラです!
「なかなか自社のDXが進まない・・・」と悩んでませんか?
デジタル技術活用の重要性を認識しても、「何をすべきかの見極めが難しい」と感じている人は多いと思います。
そこで今回は、経産省がDXの実現を目指す日本企業を対象に公開した、「DXレポート」について解説します!
この記事は以下のような人におすすめ!
- DXって結局何をしたら良いかわからない人
- 社内のDX推進に失敗し悩んでいる人
- 最新のDXの新しい考え方に理解が追いついていない人
DX の必要性が認識され、一定のデジタル投資は行われるものの、ビジネス変革に繋がっていない状況がほとんどだと思います。
この記事を読めば、社内のDXを推進しビジネス変革に繋げるためにどうすれば良いのか?がわかります!
また、国の方針を理解することで、自社が未来に向けてどんな目標をたてて動けばいいか?を理解できるはずです。
医療業界にこうした知見を取り入れることで、DX推進のアイデアに役立つでしょう。
それでは、どうぞ!
医療者にとって、経済産業省 (以下、経産省)はあまり馴染みのない省庁かもしれないので、はじめに解説します。
経産省の任務は、経済産業省設置法 第3条にて、次のように定められてます。
- 民間の経済活力の向上
- 対外経済関係の円滑な発展を中心とする経済及び産業の発展
- 鉱物資源及びエネルギーの安定的かつ効率的な供給の確保
今回のDXの文脈でいうと、「民間の経済活力の向上」が関わってくるわけですね。
技術の発展とともに、これまでにないビジネスモデルを展開し既存産業を破壊・創造する新規参入者が増えてます。
日本企業が競争力を維持・強化するために、経産省は重要な役割をになっているわけですね。
医療業界との関わりでは、以下のようなものがあります。
- 地域におけるヘルスケア産業の創出
- ヘルスケアビジネスコンテストの開催
- 認知症介護予防事業
- 医療機器開発支援
- 健康経営の推進
普段あまり気づかないだけで、経産省はヘルスケア産業政策とも密接に関わっていることが伺えます!
経産省はこれまでに、4つのDXレポートを公開しました。
「レガシーシステムから脱却し、経営を変革」
「レガシー企業文化から脱却し、本質的なDXの推進へ」
「目指すべきデジタル産業の姿・企業の姿を提示」
「デジタル産業への変革に向けた具体的な方向性やアクションを提示」
1、2年毎にレポート内容が見直されていることから、これまでのDXの道のりはかなり険しいものだったと予想できます。
それもそのはず、2019年に新型コロナウイルスの流行がおきました。
企業は「感染拡大を防ぎ、顧客・従業員の生命を守りながら、いかに事業を継続するか」という対応を強いられたわけです。
社会の変化に対応するにはIT化を進めざるを得ず、国もそれに応じる形となったのでしょう。
しかし依然として企業のデジタル投資は、「既存ビジネスの効率化中心」に振り分けられている状況が続きました。
それを打破すべく国はどういうアクションを示したのでしょうか?
では早速レポートの中身を見ていきましょう!
このレポートは2018年9月に公開され、「DX」や「2025年の崖」という言葉を世間に浸透させると共に、日本のDXが進捗しない現状に警鐘を鳴らしました。
古いITシステム (以下、レガシーシステム)の残存によって発生しうる「2025年の崖」問題について、以下の説明があります。
- DXを進めようとしても、複雑化・ブラックボックス化したレガシーな既存システムが足枷となっている
- そのメンテナンスに、必要以上の人材と費用が投入されている
- 古いシステムのサポート終了やメンテナンスできるIT人材が引退した結果、システムの運用保守ができなくなり、業務基盤の維持が困難になる
- この状況を改善できない場合には、経済損失が2025年以降、最大12兆円/年にのぼる可能性がある
毎年12兆円の損失とは、まずいですね・・・
欧米ではデータを活用したビジネスが広まる中で、日本のデータ活用への取り組みが遅れた場合、デジタル競争の敗者になってしまうという強い危機感があったのでしょう。
この「2025年の崖」問題が提起された背景に、以下が挙げられました。
- 経営層の危機意識やコミットが不足
- IT人材の不足
- ユーザ企業からベンダー企業への丸投げ
3つ目のIT丸投げですが、医療業界でもよくあることではないでしょうか?
1つ過去の事例を紹介したいと思います。
【医大とベンダー企業間の訴訟事例】
電子カルテを中核とする病院情報管理システムの、開発失敗の責任をめぐる訴訟。
医大は数百もの追加要望を段階的に求め、スケジュールが大幅に遅延。ベンダー側に契約解除を通告したが、ベンダー側は不当な受領拒絶によりリース料を受け取れなくなったとして、損害賠償請求を提訴。高裁にて、ユーザ側の協力義務違反を認め、10億円以上の損害賠償支払いを命じた。
(2008 年システム構築を開始、2010 年一審提訴、2016 年控訴、2017 年高裁判決)
開発を進める際は、ベンダー企業に丸投げせず、依頼側が何をやりたいかをきちんと示し、プロダクトのオーナーシップを持つことが重要といえます。
経産省はこうした実情を踏まえ、2025年の崖を克服するための「DX実現シナリオ」を作成しました。
集中的にレガシーシステムの刷新を行いつつ、新たなデジタル技術を活用して新しいビジネスモデルをつくることにより、2030年に実質 GDP130兆円超 の押し上げを実現するというものです。
経産省はシナリオ実現に向け、「DX推進指標」「DX認定制度」などを作成しました。
「DX推進指標」は、企業がDX推進状況の自己診断を可能とするものです。
健康診断で例えると、問診や血液検査のようなものです。
この診断結果を踏まえ、自社の弱い部分・伸ばしたい部分を認識し、その後の詳細診断や治療につなげることができます。
具体的には、以下の内容になります。
- 35項目の提示された「クエスチョン」に回答
- DX推進の成熟度を6段階(レベル0-5)で評価
- 自社の現状や課題を認識し、アクションに繋げる
- 翌年度にもう一度診断を行い、達成度を継続的に評価する
- 結果を中立組織が集計分析し、ベンチマーキングを行なって情報提供する
良い点数を取ることではなく、結果からアクションに繋げることが重要といえます。
ベンチマークとの差を把握することで
「他社よりも、IT投資が少ないな。」
「他社よりも、経営陣のコミットの関与が薄いのか。」
など、客観的に理解できるようになり、とてもありがたいですね!
医療業界でもぜひ活用したい指標といえそうです。
経産省は2020年5月に、DX認定制度を作成しました。
国が策定した指針に基づき、優良な取り組みを行う企業を「DX Ready」(DXを推進する体制が整っている)として認定するものとなります。
この制度を受けるメリットを3つご紹介します。
- DX推進時に論点を整理できる
- 企業としての信用やブランドが向上する
- 融資や特例などの支援措置や、税額控除などの経産省の施策に応募できる
DX認定制度によって、企業のDXを推進するだけでなく、国からお墨付きをいただくことで信頼が増やせます。
また、 DX認定を受けた国内上場企業の中から、一定の審査をへて、特に優れたデジタル活用実績があると判断された企業を「DX銘柄」と名づけました。
医療に当てはめると、以下のイメージになります。
- DX認定制度 → 認定医制度
- DX銘柄 → 専門医制度
このように、経産省はDXへの取り組みに向けたモチベーション向上施策を複数うっていることがわかりますね。
一方でこのレポートは、「DXの必要性」について一部の誤解を生んだと言われております。
- DXとはレガシーシステムの刷新である
- 現時点で競争優位性があれば、これ以上のDXは不要である
DXレポートが公開されても9割以上がDX未着手/途上だったのは、これが理由と考えられています。
一方で、5%の少数の先行企業は、DXを順調に取り組んでいる結果になりました。
このように国内におけるDXへの取り組みは、「すでにDXを推進している企業」と「何もしていない企業」に二極化しました。
2019年時点で、9割以上の企業がDXに未着手/途上であり、2020年調査でもこの状況に顕著な改善は見られませんでした。
しかし新型コロナウイルスの流行により、企業に対して「感染拡大を防ぎ、顧客・従業員の生命を守りながら、いかに事業を継続するか」という対応が強いられました。
これにより、はじめて自社のデジタル化が遅れていることを実感したと示されています。
こうした背景から、よりDXを加速すべくDXレポート2.0が公開されました。
アクションは、超短期、短期、中長期の3つに分かれます。
市場に出ているサービスで、業務のデジタル化を進めるように示してます。
- 業務環境のオンライン化
リモートワーク対応、オンライン会議 - 業務プロセスのデジタル化:
OCR製品、RPA、クラウドストレージ、営業のデジタル化 - 従業員の安全・健康管理のデジタル化:
人流の可視化、活動量計、従業員満足度調査ツール - 顧客接点のデジタル化:
ECサイトの開設、チャットボット
こうしたツールの全社導入は、経営陣のリーダーシップが重要になってきますね。
戦略の策定、体制の整備、状況の把握の3つを示しております。
- 戦略の策定
業務プロセスの見直し - 体制の整備:
リモート作業できるインフラ整備、デジタル責任者の役職の明確化 - 状況の把握:
DX推進指標の活用
コロナ禍前の「人が作業することを前提とした業務プロセス」を、デジタル前提で見直す。
そして顧客起点でプロセスを考えることで、生産性向上や価値創造ができると示しております。
企業内に事業変革の体制が整い、環境の変化に迅速な対応ができることを目指します。
- プラットフォームの作成
IT投資を効率化・抑制するため、業界内の他社と協力して形成する - 開発体制の整備:
機敏に迅速にソフトウェアを提供できる反復増加型の体制に(アジャイル開発) - ベンダーとの新たな関係
共創・共育するパートナーへ - DX人材の確保
ジョブ型人事制度の拡大、副業・兼業の推進
このようにDXレポート2.0では、コロナ禍による変化と日本企業でのDXへの取り組みが進んでいない状況を背景に、改めてDX推進の方向性とアクションを示しております。
DXレポート2.1は、DXレポート2.0の追補版として、2021年8月に公開されました。
公開された背景に、企業や産業のあるべき姿が深掘りできなかったことがあげられます。
このレポートが定義する、デジタル産業のあるべき姿について解説します。
デジタル技術により、以下の3つを達成する社会をさします。
- 社会課題の解決や新しい価値・体験の提供が、スピーディーに行われる
- グローバルで活躍し、世界の発展に貢献する企業が生まれる
- 企業の資本や所在地を問わず、価値を生み出すことができる
理想のデジタル社会を実現するために、以下のデジタル産業が必要になります。
- 社会課題の解決や、新しい価値・顧客体験を、サービスとして提供する
- 大量のデータを活用して課題を発見し、リアルタイムに価値提供をする
- インターネットにつながり、サービスを世界規模にする
- 顧客や他社とつながって、価値提供をする
企業は自社に閉じず、他社や顧客と協力してつながることで、単独ではなし得ないような価値を生み出すことができます。
従来の「ピラミッド構造」から、「ネットワーク構造」への転換が必要といえます。
DXレポート2.2は、2022年7月に公開されました。
「2025年の崖」問題の克服状況は順調ではないものの、DX推進の取り組みは着実に前進しているといえます。
一方で、以下のような問題がありました。
2022年の調査結果は、以下の通りです。
- デジタル投資の内訳は、既存ビジネスの維持・運営が約8割
- サービスの創造・革新の取り組みに成果が出ている企業は、1割未満
- DX推進に投入される経営資源が、企業成長に反映されていない
「新しいシステムを入れることがDXである」というITベンダーと、「人件費を圧縮するために効率化や省力化を目指したい」経営者が、DXという名の下にITを導入している現状といえます。
効率化中心のIT投資から脱却し、新規ビジネスの創出や収益向上につながるために、以下が大事と書かれております。
- 小さく始めず、全社で一斉にトップダウンで実施する
- 戦略やビジョンだけでなく、行動指針も示す
- 異業種であっても、グローバルに通用するような事例を参考にする
- 自社の強みを積極的に外部へ発信して、顧客や他社とつながる
- 顧客志向を徹底し、顧客行動をデータで取得して可視化する
・成功している異業種をまねろ
・トップダウンで一気にやれ
・発信せよ
など、かなり踏み込んだ内容ですね…
大きな変革をしないと、産業変革につながるようなDXはおきないという、強烈なメッセージといえます。
2018年、「2025年の崖」問題で衝撃を与え、その後ほぼ年に1回のペースでバージョンアップされたDXレポート。
誤解や失敗などあれど、その効果は着実にでてきているといえます。
一方で、医業利益率が2%台の医療業界では、他産業のように積極的なIT投資を行うことは難しいかもしれません。
そのほかにも以下の理由から、医療業界はまだまだ「効率化中心」のIT投資がメインとなっているといえます。
- 院内にIT人材がいない
- 電子カルテがベンダー依存で閉鎖的
- マイナンバーや電子処方箋など国主導のプラットフォーム開発が遅れている
こうした状況において、DXレポート2.0における超短期・短期アクションや、DXレポート2.2におけるデジタル社会のあるべき姿に向けた具体的なアクションは、医療業界にも応用可能だといえるでしょう。
また、異業種の事例から学ぶという姿勢、患者や他病院とデジタルでつながってビジネスを創る、という考え方も非常に有用です。
今後、データヘルス集中改革プランである、電子処方箋・マイナポータル・電子カルテ共有などが進むことで、患者データの取得や連携がスムーズになり、より良い医療の提供へとつながることでしょう。
最後に、今回の経産省のDXレポートの記事をおさらいします。
- DXが進まない場合、2025年以降12兆円/年の損失がおき、日本はデジタル競争の敗者となってしまう
- DX推進指標の分析結果によると、十分ではないものの、着実に日本のDXは前進している
- 効率化中心のIT投資から脱却するためのアクションは、DXレポート2.2を見よう
以上となります。
最後まで記事を読んでくださりありがとうございました!