こんにちは、チョトラです!
「医療保険についてよく知りたい…」
「日本の医療保険制度の問題点ってなんだろう?」
と悩んでませんか?
病気になった時に、医療保険制度まで意識して病院受診する人は少ないかもしれません。
そこで今回は「医療保険制度の全体像」を理解するための記事を用意しました!
この記事は以下の人におすすめ!
- 医療保険について詳しく知りたい
- 医療保険制度の特徴や問題点について知りたい
- 今後の見通しについて知りたい
この記事を読めば、 医療保険制度の問題点が理解でき、国の未来へのアクションが理解できるはずです!
医療者のみなさまにとっても、この知識が日常診療の視点を変えるきっかけになるかもしれません。
それでは、どうぞ!
医療保険制度は、社会保障制度の中の「社会保険」の一つに位置付けられます。
社会保障制度は、国民の安心や生活の安定を支える「セーフティネット」を作ることを目的に、1950年に整備されました。
「社会保障」という概念は、以下のように定義しております。
- 経済保障により、国民が生活が苦しくなった時に、国によって最低限の生活ができるようにすること
- 公衆衛生や社会福祉の向上により、国民が文化的な生活を営むことができるようにすること
社会保障制度が人々の生活を支えるものであることから、その要素である医療保険制度も我々の生活にとって必要不可欠なものであることがわかりますね。
医療保険制度は現在に至るまで、めまぐるしい変化にさらされながら、充実が図られてきました。
戦後の緊急援護と基盤整備
国民皆保険・皆年金
安定成長への移行と、社会保障制度の見直し
少子高齢化に対応した、社会保障制度の構造改革
21世紀を迎えた今日、とりわけ深い課題として少子高齢化の進行があります。
詳細は後述しますが、労働者人口の減少と高齢化による社会保障費の増加は、制度の持続可能性を脅かす問題に発展しています。
それでは、医療保険制度の特徴を見ていきましょう。
日本の公的医療保険は、職業や雇用形式、年齢などに応じて種類が異なりますが、誰もがいずれかに加入しております。
これを、国民皆保険といいます。
- 健康保険組合 (組合健保)
主に大企業などの従業員とその家族が加入 - 全国健康保険協会 (協会けんぽ)
組合健保のない中小企業の従業員とその家族が加入 - 共済組合 (共済)
公務員とその家族が加入 - 国民健康保険
自営業者とその家族など、上記健康保険の加入者以外が加入 - 国民健康保険 (退職者医療制度)
社会保険に入っていた人が、定年退職後に年金により生計を立てている方とその家族が加入 - 後期高齢者医療制度
75歳以上になると加入
つまり、日本で生涯を過ごせば、いずれかの医療保険に加入していることになります。
生まれてから働くまで: 親の被用者保険に加入
会社勤務時: 会社の健康保険組合(または協会けんぽ)に加入
65歳で定年: 国民健康保険に加入
75歳以降: 後期高齢者医療制度に加入
もしアメリカのように公的医療保険がなく(限定的で)、民間の保険しかなかったらどうなるでしょうか?
病気になりやすい人はより高額な保険料を提示され、保険に加入できないかもしれません。
日本では、全国民が決められた保険料を支払うことで、少ない費用で医療を受けることができます。
全国民が、安心安全の医療サービスを等しく受けられる国民皆保険制度は、日本の素晴らしい仕組みですね!
保険料は毎月の給料から天引きされて、ぐぬぬぬぬぬぬぬ
ってなりますが、このお陰で病院を受診したときの医療費が安くなるんですね。
私たちは、ネットの情報や口コミ、家からの距離などを参考に、病院を自由に選ぶことができます。
これを「フリーアクセス」といいます。
こんなの当たり前でしょ?と思われるかもしれませんが、海外ではそうではありません。
- アメリカ
保険会社に指定された場所を受診しなければならない。そうでない場合には費用が高くなる。 - イギリス
まず自分の家庭医に診てもらわなければ、専門医療を提供する病院にかかることはできない - フランス
かかりつけ医制度 が導入され、紹介状なしに他院を受診した場合、保険償還を受けられないことがある
「自分が信頼する病院に行きたい。」「名医にかかりたい」
こうした患者さんの権利を保障し、日本全国どこでも同じ価格で受診できることは、大きなメリットといえます。
一方で、フリーアクセスには問題があります。
患者さんの大病院志向やコンビニ受診、軽い病気での救急車利用などにつながってしまうことです。
こうした受診行動はムダが多く、結果として医療従事者の疲弊や医療費の高騰を招く側面があります。
診療所や病院で治療を受けた時、保険証を持っていれば、医療費負担は通常3割になります。
- 6歳未満: 2割
- 6-70歳未満: 3割
- 70-75歳未満: 2割 (現役並の収入がある場合は3割)
- 75歳以上: 1割 (一定の収入がある場合は2割、現役並の収入がある場合は3割)
金銭的負担を抑え、安心して高度な治療を受けられるのは、日本の医療の大きな特徴といえます。
現在、医療保険制度にはさまざまな問題点が浮上し、制度存続の危機にさらされております。
2021年のデータでは、総人口に占める65歳以上の高齢化率は、28.9%といわれています。
高齢者は若い世代より病気にかかりやすいことから、医療費は必然的に増えることになります。
以下の国民医療費の推移を見ると、年々急増していることがわかります。
社会保障費全体で見ても、年間約3兆円のペースで増加していることがわかります。
この20年で倍以上に増えており、今後もさらなる増加が見込まれています。
医療保険の主な収入源は保険料ですが、現在、制度の維持が困難なほどの収入低下が起きております。
1961年当時、日本の経済は成長期にあり、労働人口も多かったため保険料の確保もスムーズに行われておりました。
その後もこの傾向は続いたため、1973年に老人医療費が無料となりました。
しかし、バブル崩壊による景気低迷で正規雇用者の減少や労働人口の減少がおき、保険料収入が減少しています。
国は増大する社会保障費と保険料収入の収支バランスを保つために、公債金(借金)を投入して国民皆保険を維持してきました。
また1984年以降、「医療法改定」をたびたび行い、国民医療費を抑制する手が次々と打たれました。
しかし、効果的に社会保障費の増大を抑えることができずどんどん増え続け、平成30年は33.7兆円の借金をかかえているという報告があります。
国は33.7兆円の借金をして、23.3兆円返済してるんだ。
例えると、年収500万円の家庭に借金1億円があり、この借金の利子200万円を払うために、また新たな借金を繰り返している、という悲惨な状況なんだ…
多くの借金に頼っているということは、私たちの子や孫の世代に負担を先送りしていることになります。
このように現在の社会保障制度は、制度疲労を起こしていると考えられます。
若い世代ほど保険料の負担が重く、また財源の一部を借金に依存し、政府の財政赤字の主因になっています。
その結果、国民の生活に安定や安心を提供するはずの社会保障が、将来不安や個人消費の低迷、少子化などの一因となっていると考えられます。
国はこれまで、医療保険制度の問題に対し、さまざまな改革をしてきました。
ここでは、2つほどご紹介したいと思います。
社会保障制度は、働く世代に負担が集中する側面がありました。
そこであらゆる世代が公平に分かちあえるように、景気の変化に左右されにくく特定の人に負担が集中しない消費税を増税する方針となりました。
2012年、社会保障と税の一体改革法案が成立しました。
消費税率を段階的に5%あげ、1%を「社会保障の充実」に、4%を「社会保障の安定化」に使うというものです。
今まで消費税の使い道は、高齢者が中心でした。
しかし少子化対策を進めるため、新たな財源を子育て世代のために使う方針になりました。
具体的には、都市部の保育所不足による待機児童問題、地方の医師不足や、特養ホームの入居待機者の増大、介護職員の処遇改善などに増収分が使われる予定でした。
一体改革の結果ですが、目標であった「2020年までに社会保障の充実と安定化の同時達成」は、達成されませんでした。
- 消費税率は2014年に5%から8%に引き上がった
- しかし8%から10%への引上げは、その後2度にわたり延期された
- 3度目の引き上げに先立ち、政府は「新しい経済政策パッケージ」を発表した
その中で、社会保障充実のため新たな施策を実行するため、財政安定化のための財源が不足する。ゆえに、2020年の財政安定化の達成は困難になると示した。
社会保障費の急激な増加に占める公費負担の増加に歯止めがかからなかったことも原因といわれてます。
- 社会保障財源の合計は、89兆円 → 133兆円へと49%増加した
- 社会保険料は54.9兆円から72.5兆円と32%増加した
- 公費負担は25兆円から50.3兆円と101%増加した
社会保障財源として消費税の増税にウェイトを置きすぎた結果、社会保障における国の関与のあり方についての議論が不十分だったことによる。言い換えれば、公的年金、医療、介護及び社会福祉の給付のために必要な公費負担ルールを定め、そこから推計される公費負担額を前提にして全体を消費税を含めて財源調達する観点から出発するべきであった。
一体改革はなぜその目的を達成できなかったか
社会保障の充実・安定化という2兎を追い求めた一体改革でしたが、後者の1兎は遥か遠くに行ってしまったといえます。
2019年、消費税率が10%に上がったことで、「社会保障と税一体改革」はひと段落した格好になりました。
これまでの社会保障制度では、「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心」という考え方が主流でした。
しかし、今後の社会保障制度の改革は、子育て世代など現役世代への給付を重視すると同時に、高齢者には相応の負担を求めるということを基本として、改革を進める方針となりました。
2020年の閣議決定を踏まえ、2021年健康保険法の改正が行われました。
概要は以下の通りです。
- 後期高齢者の医療費の窓口負担割合の見直し
2022年10月1日から、75歳以上の方で一定以上の所得がある方は、窓口負担が1割 → 2割に。 - 子ども・子育て支援の拡充
育児休業中の保険料の免除要件の見直し、子どもの国民健康保険料等の均等割額の減額措置 - 生涯現役で活躍できる社会づくりの推進
保健事業における健診情報等の活用促進
75歳以上の2割負担の条件で、所得が一定かどうかは、以下の流れで決まります。
この法律の見直しは、現役世代の負担上昇を抑えるためのものです。
少しでも多くの方が「支える側」として能力に応じた負担に応じることによって、医療保険制度を未来に繋いでいこうというものです。
2021年11月、全世代型社会保障検討会議は、全世代型社会保障構築会議として再始動しました。
「検討 → 構築」とフェーズは進み、以下を論点に現在も議論を進めています。
・男女が希望通り働ける社会づくり・子育て支援
・女性の就労の制約となっている制度の見直し
・勤労者皆保険の実現
・家庭における介護の負担軽減
・地域共生社会の実現
・持続可能な医療・介護・福祉サービスの構築
2022年12月に取りまとめが公開されるので、ぜひチェックしてみてください!
今回は日本の医療保険制度について、概要・問題点・国の動きなどを解説しました。
ポイントをまとめますと、次の通りです。
- 日本では、国民皆保険・フリーアクセスのおかげで、誰もが質の高い医療を安価に受けることができる
- 医療保険制度は、高齢化・少子化の影響で財源の収支バランスが悪化し、存続の危機にさらされている
- 全世代の国民が等しく社会保障制度による恩恵を受けられるように、改革が進行中である
医療保険制度の知識があると、病院にかかった時や、自分の給料明細を見るときに、違った景色が見えてきますね!
ぜひこれからもニュースや記事を読んで、国の動きをチェックしていきましょう。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!