こんにちは、チョトラです!
「診療報酬改定DXの内容が気になる…」
「具体的にどんなメリットがあるの?」
と悩んでませんか?
そこで今回は「診療報酬改定DXの概要」と「今後、医療保険制度はどう変化するのか?」について解説します。
この記事は以下の人におすすめ!
- 2年ごとの診療報酬改定で、毎回バタバタしてしまい嫌気が差している人
- 診療報酬改定DXで、医療現場がどう変わるのかを知りたい人
- ヘルスケアビジネスの立ち上げを今後考えている人
この記事を読めば、 診療報酬改定DXによって、医療の未来がどう変わっていくのか?がわかるはずです!
2年毎の診療報酬改定で、いつもバタバタして疲弊していませんか?
ぜひこの記事を読んで、国の医療DXへの本気度を感じ、未来への希望となりましたら幸いです。
それでは、どうぞ!
診療報酬という言葉ですが、「聞いたことはあるけれども、具体的にはどういうこと?」と思っている方は多いのではないでしょうか。
まずはじめに、診療報酬の仕組みについてご紹介します。
診療報酬とは、医療機関が患者さんを診療したときに受け取る報酬のことです。
診療報酬制度が普及する前は、患者さんが全額治療費を支払わなければなりませんでした。
そのため、治療が受けられない貧困層の人たちを救済する目的で、医療保険制度がスタートしました。
これにより、診療報酬の1〜3 割を患者さんが支払うだけで、高度な医療を誰もが受けることができるようになりました。
残りの7〜9割は、患者さんが加入している国民健康保険や健康保険組合・全国健康保険協会などの保険者から支払われます。
診療報酬の決まりですが「今回の診察料は1000点です」という感じで、点数であらわされます。
1点 = 10円のため、この場合の診療報酬は10000円ということになります。
自己負担率が3割の患者さんの場合、10000×0.3=3000円が窓口で支払う金額になります。
残りの7000円分は、病院がレセプトを提出し審査を経て、約2ヶ月後に保険者から支払われます。
この診療報酬請求の詳しい仕組みについては、以下の記事をご参照ください。
診療報酬の点数は、基本的には2年ごとに改定されます。
これを「診療報酬改定」と呼んでいます。
なぜ国は診療報酬をわざわざ改定する必要があるのでしょうか?
それは、診療報酬は主に、病院にかかる設備や人件費、医薬品などに使用されるからです。
景気が良くなり物価が上昇すれば、病院を経営するためのこれらの費用は増大します。
この時に診療報酬を上げないと、病院の収支はマイナスに傾き、運営に支障をきたしてしまいます。
一方で、景気が悪化すれば患者さんの収入は減り、医療費を払えなくなってしまうかもしれません。
そういう時は、診療報酬を下げて患者さんの自己負担を減らす必要が出てきます。
このように、診療報酬は、その時の経済や社会情勢などを踏まえて、改定されます。
そのほかにも、診療報酬の改定は以下の要因でも決まるよ!
- 国が力を入れて推進したい医療や政策:保険点数や加算点数が上がる
- 普及が進み導入のハードルが下がったり役割が終わったもの:点数が下がる
診療報酬の改定は、医療機関はもちろんのこと、周辺のヘルスケアビジネスにまで大きな影響を及ぼします。
そのため、診療報酬改定の流れを知っておくことは、とても大切なことになります。
では、早速みていきましょう。
診療報酬の改定は、複数の関係者が登場しますので、それぞれご紹介します。
- 政府:全体の改定率
- 中医協:個別の点数設定
- 社保審:改定の基本方針
診療報酬は、病院や薬局が自分たちで決めるものではありません。
医科、歯科、薬価などを含めた全体の診療報酬にどのくらいの予算を割り振るのかは、予算編成のなかで内閣が決定します。
政府は6月に「骨太の方針 (正式名称: 経済財政運営と改革の基本方針)」を出します。
この方針で、政権の重要課題や翌年度の予算編成の方向性を示します。
そして、診療報酬の方向性も、この骨太の方針に沿うことになります。
12月に国の来年度予算が決定し、それと同時に診療報酬全体の改定率が決まります。
中医協(中央社会保険医療協議会)は、厚生労働省の諮問機関です。
役割としては、診療報酬改定に向けて、具体的な点数や算定要件を議論します。
メンバーは「診療側委員」「支払側委員」「公益委員」という3つの立場から構成されます。
診療報酬改訂の内容は、診療側と支払側が交渉し、意見の対立を公益委員が調整して決定します。
中医協の決定(答申)は「〇〇加算を1000点から1200点に増やす」というように、具体的なものになります。
厚生労働大臣はそれを受け、3月上旬に診療報酬改定に係る告示・通知を発出し、これによって新年度の診療報酬が決定されます。
中医協の役割は、以下をイメージするとわかりやすいですよ!
- 診療側「現場はかなり厳しい。もっと予算をくれ!」
- 支払側「社会保障費が増えすぎてる。少しでも医療費を下げさせてくれ!」
- 公益側「2人とも落ち着いて!社会全体のためには、こうしたらいいんじゃないかな?」
社保審(社会保障審議会)も、厚生労働省の諮問機関となります。
ここでは医療保険に限らず、社会保障の様々な分野の審議が行われています。
中医協との違いは、診療報酬改定の基本方針を決定することであり、点数を何点にするか?などには関与しません。
では、診療報酬改定の実際の流れを見てみましょう。
内閣から出された診療報酬の改定率と、社保審の基本方針をもとに、中医協は審議を行います。
審議が終わると改正案を提出し、その結果に基づき、厚生労働大臣が公の価格を決定します。
診療報酬改定のスケジュールは、以下のようになります。
社保審は、国の骨太方針を受け、12月に基本方針を決定します。
また、内閣も改定率を12月に決定します。
その後中医協における諮問・答申を経て、3月初旬には告示・通知が発出されます。
そして、4月1日より診療報酬の改定が施行されるというスケジュールになります。
このように、診療報酬改定はかなりの短期間で一気に進むことがわかります。
350ページ以上にものぼる個別の診療点数が明らかになるのは、改定の1ヶ月前の3月。
この1ヶ月という極めて短期間に、改定内容に合わせた変更を進めることが、多くの問題を引き起こしました。
それぞれの立場から、この問題について解説します。
「診療報酬改定のたびに、エンジニアが連日徹夜になるほど過重作業となっている」
こうした悲痛な声は、2010年頃から寄せられておりました。
実際、診療報酬改定前後は、医療機関にベンダーが張り付くのが日常的な姿になっていました。
- 医事会計システムの改修、病院内システムの変更などを、急ピッチで対応
- 改定内容が曖昧なことにより、のちに手戻り作業が発生
- ベンダー同士の互換性がなく、改定のたびに、各社でシステム改修が発生
診療報酬改定の度に、資料を読み解きロジックに落とし、システムに反映させるという作業を、4月1日前に間に合わせるという綱渡りを隔年で行ってきました。
また、改定内容は、確定後「疑義解釈」という通知によって明確化されるため、そのたびに変更作業が発生し、改定施行日の後も継続して変更作業が進められてきました。
また、これまで電子カルテやレセコンのシステムは、各社独自のコードを使うなどして開発が進んだ経緯がありました。
その結果、ベンダー間の互換性に乏しくなり、改定のたびに各社でシステム改修という同じ作業が発生しておりました。
過重な労働を余儀なくされた結果、自分の子供の入学式や卒業式に行けなくなった人達もいるんだ…
負荷軽減に向けて、早急な改善が求められますね…
上述のように、改定前後のエンジニアの作業量は膨大になり、改修経費やランニング経費がかさんでおりました。
また、頻繁なシステムの更新に伴い、医療機関のスタッフが慣れるまでに時間を要して、労働生産性が低下しておりました。
システム以外の面でも、医療機関側では収入となる診療報酬をなんとか減らさないために、改定の度に診療報酬の変更内容を十分に理解する必要がありました。
しかし、これらは多様で難解な仕組みのために、改定のたびに翻弄されながら対応する状況が続いておりました。
2022年5月、自民党は「医療DX令和ビジョン2030」の中で「診療報酬改定DX」を提言しました。
ポイントは、以下の通りになります。
各ベンダー間で互換性がないため、それぞれが同じシステム改修作業をしてしまう問題を指摘しました。
これを打破するために提唱されたのが、共通算定モジュールというアイデアです。
厚生労働省・審査支払機関・ベンダー・デジタル庁が協力して作成を行い、診療報酬の改定の際は、当該モジュールの更新を行うことで足りるようにするというものです。
より具体的には、診療報酬の点数や患者負担金計算にかかるプログラムをベンダーが共通利用できるよう、診療行為をモジュール化し、初診や投薬といった診療行為を入力すれば、全国一律に算定点数や患者負担額をアウトプットとして返すプログラムを作ることになります。
しかし、現行の診療報酬点数の仕組みはとても複雑のため、どこまでモジュール作成が進むかは未知数です。
もし実現すれば各ベンダーの負担は大きく軽減し、医療機関のコスト削減につながることでしょう。
診療報酬改定の施行日(4月1日)を後ろ倒しにし、作業集中月を解消することを目指すものです。
これにより、リリースされてから、確認及びテスト期間を十分にとることができます。
結果として、モジュール作業の後戻りやミスをなくすことにつながり、作業負荷の分散が期待できます。
政府は、2022年10月12日「医療DX推進本部」の初会合を開催しました。
医療DX推進本部は、岸田首相が本部長を務め、省庁横断で「診療報酬改定DX」を推進するものです。
今後の医療DXのスケジュールは、2023年春頃までに3回程度の検討を進め、工程表を策定予定です。
今回は診療報酬改定DXについて、背景や概要、今後の動きなどを解説しました。
ポイントをまとめますと、次の通りです。
- 診療報酬の改定は、2月に中医協答申、3月に関連告示・通知、4月1日施行と極めて厳しいスケジュールで行われている
- その結果、ベンダーの過重労働問題や医療機関のコスト問題、医療スタッフの労働生産性の低下をうんでいる
- 共通算定モジュール作成と、施行日の後ろ倒しなどを検討し、国家戦略として診療報酬改定DXは進行中である
デジタルの活用により、診療報酬改定の負荷軽減と生産性向上が実現し、医療保険制度全体の運営コストが削減すればと思います。
最後までお読みいただきまして、ありがとうございました!